やめよう「デジタルサイネージのご提案」

これは本当にあった話です。
とある会社さんの、とある大手企業へのデジタルサイネージ導入に向けて最終プレゼン。
プレゼン相手は社長です。プレゼン会場では説明に使用する提案書が手際よく配布されました。なかなかの大作と聞いています。社長が提案書を手に取ったその時、社長の顔が強張っりました。そして資料を開くことも無く、そのまま机に戻してひと言。「こういう考えの君たちとは一緒にはやれないな」それだけ言って社長は部屋を出てしまいました。
机に残された資料の表紙にはこう書かれていたのです

「デジタルサイネージのご提案」

本稿を読んでおられるのがデジタルサイネージを売る側の方だとすれば、これは肝に銘じておくべき教訓です。デジタルサイネージ以外の業界の方でも別の言葉で言い換えることができると思います。単に「デジタルサイネージのご提案」という記載がいいか悪いかという話ではありません。

あなたの顧客は、何のためにデジタルサイネージを導入しようと思っていますか?
こんな当たり前すぎることをあなたはきちんと理解していますか?
そしてそれは提案内容にきちんと盛り込まれていますか?
システムや機能の説明に終始してはいませんか?

デジタルサイネージがもたらす経営的メリットには説得力がありますか?
顧客の課題解決に貢献できていますか?
導入以降のコンテンツのことや、日々の運用のことは検討されていますか?
顧客担当者の従来の業務フローにすんなり受け入れられますか?

筆者は放送業界の出身で、コンテンツ制作だけではなく広告や販促の現場も体験し、その後ネットの世界に入って、コンサルティングを生業としてきました。数え切れないほどの提案書・企画書を書いたし、また逆に提案も受けてきました。しかし、どういうわけかデジタルサイネージに関わる方々の提案内容は、驚くほどに顧客視点でないのです。理由はよくわかりません。

以前にはもっと驚くような提案を、危うく一緒に提案させられそうになりました。

1 デジタルサイネージにQRコードを表示させてモバイルに誘導するというサービスA
2 スマートフォン用のサイトを簡単に作れるサービスB
3 位置情報とサイネージを連動させるというサービスC

この3つを単純に並列で記載し、「こういうのがありますがどうでしょうか?」という、信じられないような内容なのです。

言っておきますが、1から3のそれぞれが個別に悪いということではありません。問題なのは3つのサービスが列記されているだけで、それを組み合わせてどうするか、それによって顧客の課題がどう解決されるのかが一言も書かれていないことです。「デジタルサイネージの提案書」にすらなっていません。

この点を指摘すると、残念ながら何が問題なのか理解できない様子でした。あなたの顧客はデジタルサイネージを買いたいわけでも、提案をしてもらいたいわけではないのです。

この時の顧客の要件は
 既存顧客の顧客満足の向上
 既存事業に関連する領域での事業拡大
という明確な2点であったわけですが、それを完全に無視した提案をしようとしていたのです。

デジタルサイネージを扱っておられる会社の多くは、メーカー系かシステム系の会社が多いです。そのため、どうしてもモノ売りかシステム売りだけに終始した提案になりがちです。それはある程度仕方がないですが、それではいけないことをどうか理解していただきたいのです。デジタルサイネージがもの珍しく、話題性だけで売れる時代はとうに終わりました。

デジタルサイネージは時間×空間=状況に最適化されたインターネットです。そしてその多くは広告や販促といった企業のマーケティングコミュニケーションのツール自体、あるいはそのごく一部として使われます。モバイルやWEBや従来のメディアを繋ぎ合わせる、生活動線上のインターネットです。メーカーやシステム会社の方々には、未だにこれらがわかりにくいようです。分かりにくいなら顧客と同レベルまで学習しないと成約には結びつきません。あるいはわかる人と組んで提案するしかありません。初期の頃のようなの騙し売りのような手法はとうの昔に通用しないのです。

本社 YE

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